「暮しの手帖」にみる写真の撮られ方
2016/08/04
NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」の視聴率が好調をキープしているらしい。「とと姉ちゃん」は雑誌『暮しの手帖』を立ち上げた、大橋鎭子が主人公で編集者の花森安治との出会いにより雑誌作りが進められた来た実話がモチーフになっているストーリーだ。
番組を見ていると自然と実際の誌面が見てみたくなり、古い号を探して手に入れてみた。ちなみに『暮しの手帖』は、発行号数100号ごとに1世紀とカウントしている。入手したのは昭和41年に発行された第1世紀のもの。ちなみに現行の雑誌は4世紀シリーズになっている。
昭和41年に発行された『暮しの手帖』、紙面をめくるごとにカビのにおいが鼻につくのだが古いはずの各ページは初めて目にするのに新鮮に見えてくるから不思議。「とと姉ちゃん」の影響もあって、あのドラマの流れで作られていた雑誌だという思いが背景にあるのも単に古雑誌を見るのとは姿勢が異なるということもあると思う。
ここでは誌面に掲載されている写真や記事について少しみてみた。
『暮しの手帖』は、「暮しに役立つ」ことを目的にして作られている雑誌。特に徹底した商品テストは有名で、その過程も写真で掲載されている。さらには料理の作り方の手順を追った「分解写真」も豊富にあって、これらの写真を見ていると主婦向けの雑誌ということが伝わってくる。
料理の手順の写真は、真上から撮っていてわかりやすく見せている。今でこそ当たり前の撮り方だが、戦後すぐに創刊して昭和40年過ぎの20年間で現在でも通用している撮り方がすでに確立していることがわかる。当時のフィルム感度やフラッシュの精度などを思えば撮りにくい状況は多々あったと思われるがスタジオでの撮影もうまくこなされている。そのほか、商品撮影やモデル撮影の写真も多く、これらスタジオ撮りのスタイルはこのときすでに出来上がっているのだろう。写真の撮り方に軸が出来上がっているのが見てとれた。
さらにはフォトドキュメントのページもあり、記事と合わせて読んでいくと当時の生活様式がよくわかる内容だ。ドキュメンタリーフォトや組写真などはアメリカの雑誌『LIFE』などの影響もあり、日本では名取洋之助などが早くに活躍をしていたので、これらを撮れる写真家はこのころすでに何人も育っていたのだろうと思う。個人的にはこのフォトドキュメントの記事がもっともおもしろく感じた。もっと他の号の記事も読んでみたい。
海外のスナップショットのページはまだ海外旅行が一般的なものではなかった時代なだけに、異国の生活を知る貴重な情報源だったとも思える。
『暮しの手帖』に限らず昔の雑誌は文量がとても多く、読み応えは十分にある。『暮しの手帖』は読書の投稿もたくさん掲載されていて、当時の日本人の意識や生活様式がどういったものだったを知るのにも役立つ。また記事の切り口は今見ていてもとても斬新。花森安治の編集長としての力量が記事のひとつひとつからも垣間見れる感じだ。
朝ドラから『暮しの手帖』に興味を改めて持ったという方は少なくないと思うが、一度古い『暮しの手帖』のページをめくってみると新たな発見があると思う。
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