金環日食の撮り方ガイド
2016/09/13
2012年5月21日は注目の天体ショー、金環日食が観測できる日。日本での金環日食観測は、1987年9月に沖縄で観測できて以来。首都圏で観測できるのは、実に1839年以来の173年ぶりとのこと。それだけに注目度も高くなっている日食観測です。
当然これだけ注目される金環日食、その様子をデジカメで撮影しようと思う方は多いはず。そこでフォトライフコンシェルジュでは、金環日食の撮影方法を一足早くご紹介しましょう。
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金環日食の撮影に必要なものはNDフィルター
太陽の光は直接裸眼ではもちろんのこと、レンズを通しては絶対に見てはいけません。強い太陽の光が目の角膜を傷つけてしまうからです。その太陽を写真に撮るのに不可欠なものがあります。それがNDフィルター。
NDフィルターのNDとは、Neutral Densityという英語での減光の意味。その名の通り、光量を減らして撮影するときにレンズ前につけるフィルターのこと。
NDフィルターも減光量に応じて様々な種類のものがありますが、金環日食の撮影では太陽撮影用のフィルターが必要になります。
太陽を撮影するには少なくとも1/10000程度は減光できるフィルターが必要です。そこでお勧めなのが、1/100000(10万分の一)まで減光できるNDフィルター。1/100000まで絞れればレンズの絞りも幅を持たせて選択が可能です。
金環日食の撮影の第一歩は、NDフィルターを用意することから始めます。
金管日食に必要なものは光量を落とすためのフィルター。写真は、光量を1/100000に減らすことができるNDフィルター、マルミ 太陽撮影用 ND-100000 58mm。
このNDフィルターは、今回の金環日食の撮影専用のパッケージ。中には、「撮影ガイドブック」も同梱。メーカーもこの天体ショーに大きく期待していることの表れですね。もし売れ残った在庫が出た場合、パッケージを変えて再販するのかとそんな余計なこともふと思ってしまいました。
これが1/100000のNDフィルター。レンズは真っ黒で、室内の灯りなど光量はまったく透き通すことはありません。太陽の光だけを通す濃さです。
使用しているレンズの口径に合わせたフィルターを選びます。このタイプは口径が58ミリと77ミリのサイズがあります。それ以外の口径は、ステップアップリングを用いれば使用できます。
フィルターはレンズに直接ねじ込み式のものと、角型フィルターでアダプターを使うタイプのものがあります。写真がアダプターに差し込んでいる角型フィルター。角型フィルターの利点は、アダプターリングを使い様々な口径のレンズにも応用できるところ。角型タイプのND100000フィルターもあります。様々な口径でもフィルターを使うのであれば角型タイプのものが応用が効きます。使用頻度に応じて選ぶとよいでしょう。
金環日食の撮影は、マニュアル操作で
金環日食の撮影に必要なNDフィルターが揃ったら、早速太陽を撮影してみましょう。
太陽を撮る時は、マニュアル操作で撮影していきます。デジタル一眼を使用して、その手順を簡単に見ていきます。
まずISO感度をISO100に設定します。最低値が100以外の機種は最も低い値に設定します。太陽の強い光なので減光しても感度は低く設定します。
撮影モードはマニュアルモードにします。NDフィルターに同梱されているガイドブックによると晴天時の通常の太陽を撮る場合、F11の絞りでシャッタースピードが1/1000。まずはこの値を基点に撮影をしてみることとします。
撮影するときのセッティング。三脚とレリーズシャッターを使用します。シャッタースピードが速いので、手持ち撮影でも撮影は可能ですが食の過程を撮るには三脚で固定したほうが撮りやすいでしょう。レンズは望遠レンズを使用します。倍率が大きいほど太陽を画面の中に大きく写せます。
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金環日食の撮影は、シャッタースピードで調整していく
セッティングができたら、NDフィルターをつけたレンズを用いて太陽をファインダーまたはモニター画面越しにピントを合わせます。オートフォーカスだとピント合わせがやりにくいので、できればマニュアルフォーカスでピント合わせをした方がいいでしょう。
太陽を撮影するときには、望遠レンズを使います。この望遠レンズの焦点距離(倍率)が大きいほど画面上大きく太陽を写しだせます。
太陽が画面に写る大きさは次の公式で計算ができます。
レンズの焦点距離÷100
例えば、ここでは300ミリの焦点距離のレンズを使い撮影。300÷100=3、ということで撮像素子に3ミリの大きさで写るということです。カメラはオリンパスのフォーサーズ。フォーサーズの撮像素子の大きさが17×13ミリなので、画面の高さに対して約1/6程度の大きさに写るということになります。
画面に写る太陽の大きさを意識しながら写真例をご覧ください。
ND100000のフィルターを使いフォーサーズの300ミリレンズで撮影。露出は、F11、1/1000。マニュアル通りの露出にて撮影。
シャッタースピードを半分の1/500に変えて撮影。シャッタースピードがスローになった分明るく写ります。
シャッタースピード、1/250で撮影。1/1000の写りと比べると明るさの変化がよくわかります。食が進み明るさを変更するときにはシャッタースピードを変えて対応していきます。
金環日食の撮影では、食の進み具合に合わせて露出を変化させていく必要があります。例えば、今回参考に撮影した日食無しで通常の太陽を撮る時の目安がF11で1/1000でした。レンズの絞り値は固定で、部分日食が半分進んだ段階では、1/500が目安となります。太陽の縁だけが見えている金環日食時には1/100のシャッタースピードが目安。
このように食の進みつれて露出も変えながら撮影をしていきます。初めてマニュアル撮影をするのであれば、事前に太陽を撮影して練習しておくことをお勧めします。一度試して慣れておけば本番のときに慌てずに撮影ができます。
ちなみに東京での金環食の始まり時刻は、7時31分59秒、金環食の終わりが7時37分ちょうど。金環日食は短い時間での撮影となります。(※食の始まりは、6時19分02秒、食の終わりは9時2分37秒)
この日は、太陽が昇った東の空に向けてレンズを向ける大勢の方が写真を撮られることでしょう。事前にしっかり準備をして金環日食をバッチリと撮影してみてはいかがでしょうか。
Feb-27 2012 Up
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